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留学生のメンタルヘルス

1.長い海外生活では、心身の浮き沈みが大きくなります。とくに一人暮らしの経験の少ない人は、要注意です。意識的に自己管理の技術を学びましょう。自分の中にもう一匹の生き物を飼っているような姿勢で、自分を観察し調整するのがコツです。頭でっかちの義務感だけで頑張ったりせず、少しでも弱った兆候が見えたら、自分を早めに休ませたりご褒美を与えましょう。どんなに忙しくとも、思い切って時間を取り、映画を見たり旅に出たりスポーツをすることも、ときには必要です。体調次第では、前述の助言もすべて無視して構いません。


2.渡航直後は、憧れていた土地に降り立つことができて、見るもの聞くものが新しく、興奮状態になるでしょう。一生ここで住みたいと思うかもしれません。これを留学初期の「高揚期」と呼びます。

3.ところが、ちょっとした事務手続きがうまく行かなかったり、盗難・紛失・喧嘩等の小トラブルが生じたりすることがあります。これを「カルチャーショック」と呼びます。また、語学が自分が期待したほど上達してもどかしく思ったり、パーティー等での会話に加われず時計を見つめていたたまれない思いをすることも必ずあるでしょう。加えて、欧州に夏に留学すると、9-10月頃から陽がどんどん短くなり、空が灰色の雲にずっと覆われ、世界が重苦しく感じられるようになります。留学後1-3ヵ月後が多いようですが、これを留学中期における「低迷期」と呼びます。

4.日本でいうところの「五月病」と似ていますが、海外では比べ物にならぬほど深刻化しがちです。たとえば、パリ留学を志す人は、誰よりもフランス語が得意で、シャンソンにせもヌーヴェルヴァーグ映画にも詳しくて、フランス好きだと自他ともに認めるような人が少なくありません。ところが、得意だったはずのフランス語は、現地人に通じず、会話の輪の中ではゼロに等しいことを思い知らされます。しかも、「憧れのパリジャン」は想像と違って親切ではなく、日本に関心も持ってくれません。日本では博覧強記で知られた自分のフランス知識も、現地では陳腐な常識で、「トリュフォー? うんうん、よく知ってるね」という挨拶以上に会話が深まりません。むしろ、子供並の言葉では知性までも子供水準に見下されがちで、自尊心が打ち砕かれます。フランス研究10年の大学院生ですら、いやフランス一筋のパリかぶれだからこそぶつかる壁です。

5.また、海外では家族も友人もおらず、友人網を一から作り直す必要があります。家族と一緒に暮らしていれば、どんなときも「おはよう」「ただいま」程度は話しますし、日本にいれば夜中でも愚痴を聞いてくれる友人が1-2人はいます。失望感・倦怠感も、こうした日常の営みがあれば、自然と乗り越えることができます。しかし、海外の一人暮らしでは、朝から晩まで一言も話さずに一日が終わることがありえます。そのため、気分の浮き沈みに歯止めがかかることはなく、落ち込むときはトコトン落ち込む可能性があります。

6.留学初期に、学生寮の廊下に出ると外国語で話しかけられるのが億劫で、部屋の外に出られなくなった人すらいます。また、語学が中級水準に上達したものの、細部だけ聞き落とすがゆえに、人が自分の悪口を言っているように思う人もいます。こうした留学中期特有のうつ病や被害妄想を、パリ在住の日本人精神科医は『パリ症候群』と呼びました。

7.留学生のメンタルヘルスには、次の6つの要素が重要だと太田氏は述べます。①経済状態、②語学力、③性格、④留学国の基礎知識、⑤渡航前の日本社会での適応状態、⑥健康状態です。これに沿って言えば、メンタルヘルスに備えるには以下の対策が大切です。
①十分な留学費を持参しましょう。現地で稼ぐことなど考えず、当初の予算の範囲内で留学期間を切り上げましょう。
②予め中級程度の語学力を身につけましょう。渡航前に週3回以上の外国語会話訓練を受け、英語ならばTOEIC730程度を必死に身につけましょう。
③プライドや完璧主義は捨てましょう。「私は馬鹿だぴょーん」と公言して開き直る度胸を持ちましょう。自分が100%正しいというこだわりは捨て、「相手にも一理あるかもしれない」「郷に入っては郷に従え」と思う余裕を持ちましょう。
④渡航前に留学国について、10冊以上の本を読み、10以上のホームページをブックマークして、基礎知識を準備しておきましょう。留学先では、弱音を吐いて相談できるような友人を作りましょう。
⑤留学は、住みにくい日本からの逃げ道ではありません。日本でベストコンディションでない場合は渡航を思いとどまりましょう。
⑥万全の健康でない場合は、留学を延期したり、帰国を決断しましょう。

8.高揚期から、何かをきっかけに下降期に入り、その後、ゆるやかな再適応期に向かうと言われます。再適応には、上記の6つの要素のうち、①経済力や⑤渡航前の精神安定、⑥健康を前提として、②上級語学力を習得し、③生活に慣れて居場所ができ、④友人網ができることが大切でしょう。逆に言えば、語学力が未熟で、生活に慣れず、友人もできない場合、下降期からなかなか這い上がれないかもしれません。そういうときは、外国人だけでなく日本人にも友人網を広げたり、思い切って旅行や一時帰国をしてみることも大切です。

9.語学力の有無は、留学生生活に決定的な影響力があります。言葉の上級者になると改めて再び、「言葉さえ上手ならばもっと自信を持てるのに」ともどかしい思いをすることもあります。成人後の留学では、どうしても現地人と同水準の言葉づかいにはなれず、必ず訛ったり言葉足らずになったり、文章に添削が必要になったりするからです。しかし実は、語学よりも中身が大切です。言葉はへたくそながら国際舞台で熱弁をふるい、ゆうゆうと活躍するビジネスマン、政治家、学者、タレントはたくさんいます。身近にも、発音が訛り過ぎて聞き取りにくい先生、授業中に妙な質問ばかり連発するクラスメート、こんなな言葉で良く客商売ができるなと驚くような近所の店員に至るまで、たくさん例があるでしょう。

11.私の高校同期の商社マンは、フランス語が一切できず研修もないまま、日本人のいないフランス子会社に転勤を命じられました。しかし、アパートを契約し、中古車を買い、電話回線から水道工事まで、すべて独力の日本人英語でやり遂げてしまいました。来仏一ヶ月後に一緒に夕食を食べたとき、私に通訳も頼まず堂々とボーイを呼びつけ「Oh、これこれ、シルブプレ!」と無茶苦茶なチャンポン語で臆せず注文し、ロシア出張やらポーランド出張時の馬鹿話で呵々大笑していました。私は「これだ!」と心から感嘆しました。この商社はフランス語屋をパリに派遣するのではなく、「どこに行っても仕事ができる人」を駐在員に任命したのです。フランス人にとっては、フランス語一筋のフランス専門家と比べ、よっぽど面白くかつ手ごわく、一目置かざる得ないはずです。

12.語学初級者はまず言葉を勉強するべきですが、語学上級者の場合、言葉に癖や不十分さが残ることは、ハンディではなく、個性の一部だと開き直るべきです。日本人にも日本語に訛りがあったり、口下手な人がいますが、それと同じです。そして語学よりもむしろ、何らかの専門や特技で勝負するべきです。日本人ならば、まず日本語と日本知識はとりあえずの強みです。ただし、外国かぶれだと日本の勉強を軽視しがちなので、ひょっとしたら無知を痛感させられて再学習せざるをえないかもしれません。大学(卒業)生ならば専攻を持っていますし、卒業論文テーマがあればそれが専門です。社会人ならば職歴も専門です。それ以外にも、読書、音楽、漫画、趣味、恋愛、アルバイトなど、これまで生きてきた年月の中には、アピールすべきことが多々あるはずですが、それを自分の持ちネタとして再認識して伸ばすことが、話題の幅を広げ深みを増します。現地でも、スポーツ試合、コンサート、ダンス、旅行、外国人同士の交際など、新しい「こだわり」を見つけることができるかもしれません。その人の価値を決めるのはこうした専門や中身であり、道具としての語学ではありません。

13.当初目的が達成できずとも、①予算が尽きたり、⑥健康を損ねたり、留学当初の計画が狂った場合は、ズルズルと海外に踏みとどまったりせず、潔く帰国すべきです。ニューヨーク、ロンドン、パリ、シンガポールなど海外の主要都市には、語学研修を名目にその次の目的を見失ったまま長期滞在する人が多々おり、「沈殿組」と呼ばれます。将来のある若者が「沈殿」するのはもったいないです。

テーマ : 海外留学
ジャンル : 学校・教育

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Author:terry75014
仏米英生活10余年、海外大学院卒。海外渡航・留学助言は各数10ヶ国。ここでは一個人の立場で独断と偏見を書きます。テリーと呼んで下さい。

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