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出版社PR誌の魅力

出版社のPR誌が熱い。書店のレジの横で無料配布しているA5版の薄い小冊子だ。書評誌、論壇誌、エッセイ集、文芸誌として面白い。「なるほど!」と感心するような発見や「暴走」もある。一般的なリストは、「タダの本・100円の本」(Tojosの晴耕雨読)が充実しているが、趣味は個人ごとに違う。私自身は理系・学術系が混ざり、「何かためになった」と新発見や刺激が頭に残るものが好みだ。以下は試行錯誤中の個人的なランキングだ。

1. 出版社PR誌の魅力1:一般論

・執筆者はその出版社の常連陣で一流が揃う。
・気軽な番外編・裏話もあるが、同業界人の視線を意識するので、品質が落ちない。
・書店で無料配布している。Amazon全盛時代だからこそ、書店に足を運ぶ喜びや動機付けが増える。
・薄くて持ち運びしやすい。記事1本が短くて細切れ時間に読みやすい。
・千円強の年間購読料を払うだけで、書店での早い者勝ち競争を避け、自宅に郵送してくれる。
・年間購読料が千円ならば月刊雑誌1冊分、複数購読しても単行本1冊分だ。
・読まずに捨てたり、注目ページだけ破っても、惜しくない。
・専門外の話を飛ばし読みするうちに、新たな関心が掘り起こされることがある。


2.出版社PR誌の魅力2:個人的な好み

・Google検索で誰もがいつでも同じように得られる情報は、もはや無価値だ。
・WEBにはもうウンザリだ。EmailやSNSは最小限で十分だ。
・ニュースは、WEBもTVも新聞も、反復が多く時間泥棒だ。
・ネットサーフィンは、過去の関心を反復するか、連想できる範囲内で少しずらすだけだ。
・iPadに齧りつく人は、時間つぶしの惰性か中毒ではないか。
・隙間時間こそ、知的集中力を発揮できる貴重な時間だ。
・短文は気負わなくて良いので、取っ付きやすい。
・一流の執筆陣は、ぶっちゃけ話・余談・小話も知的に刺激的だ。
・移動時間が長いときに何冊か持参して、読んだものから捨てると、軽くなって達成感もある。
・文系・理系・時事系・サブカル系が混ざって隣り合うものが理想的。
・小説は雑誌連載を読むより自分で厳選したい。


エンターテイメントとしての出版社PR誌

筑摩書房『ちくま』(月刊)
一流の知識人が、主要業績での重厚な印象に反し、洒脱・剽軽な一面を見せてくれる。明るく愉快な雑誌。短い文章で読者を「ニヤッ」とさせ、ついついページが進む。原稿を書き終えた後の執筆者が、作家仲間や編集者を相手にしながら楽しく放談している感じがする。書店でも入手できたが、年間購読料千円を払った。

スタジオジブリ『熱風』(季刊)
執筆者や内容は、ジブリ・アニメに限定しない。サブカルチャーに幅広く目配りする珍しいPR誌。大げさに言えば、現代日本(Cool Japan)発の「カルチュラル・スタディーズ」の最前線で、欧米バーミンガム学派の向こうを張る。年間購読は2千円とやや高めだが、商業誌にも類例が少ないので、好きな人にはその価値があると思う。紀伊国屋書店でも入手できたが、年間購読した。

紀伊国屋書店『scripta』(季刊)
多彩なジャンル・出版社を話題にする。紀伊国屋ホールと同様、文化を支える心意気を感じる。採算度外視で、販売促進などの狭量は見られない。たとえば、大竹伸朗のスクラップブックが絶賛されていたが、地方出版社が100部限定で手作りする自主流通の画集だ。年間購読できないので、紀伊国屋書店に行く必要があるが、なぜかそれ以外の書店でも発見することがある。一部WEB化されているが、それで満足せず書店に足を運ぶ醍醐味として、冊子を見かけたら是非入手する価値がある。

飛騨産業株式会社『飛騨』
家具メーカーや賛同者が「飛騨文化」を全国発信する。高層ビル街のジュンク堂書店で発見した。「なぜここで飛騨が?」と無料配布をいぶかりながら持ち帰った。田舎同人誌と侮るなかれ。開けてビックリ! 19世紀の仏書のような装丁で、封筒から出して、ページをペーパーナイフで切り開き、紙の原初的な手触りを思い出す。no.4は出久根達郎の小説「飛い騨ん爺」が中心。飛騨から新島へ流刑にされた上木甚兵衛が主人公だが、写真挿絵のために現地ロケまで行う凝りようだ。「キツツキ・ムービー・ギャラリー」で小冊子『飛驒』no.4メイキング動画を見られる。アンケート回答者にはオマケまでつく。初期購読者は、何と専用の木製ペーパーナイフや木製保存箱がもらえたようだ。詳細は冊子を読んでからのお楽しみ。グローバル・ネット時代に対抗し、地域と木・紙にこだわってここまでやれる。

アカデミックな出版社PR誌

東京大学出版会『UP』(月刊)
学際性はピカイチ。理系図書と文系図書を対等に扱う大学出版会ゆえの強みだ。東大系執筆陣の安定感は言うまでもない。東大関係者の視線を意識しながら書いているので、一般対象の短文とはいえ内容に隙がない。丸善書店等でよく見かけるが、年間購読料千円を払った。


丸善『學燈』(季刊)
文系・理系の一流執筆陣がバランスよく厳選されている。必ず理系を組み込むのは『UP』と並び希少だ。創刊1897年で日本最古のPR誌らしい。初代編集長が内田魯庵、執筆者に坪内逍遙や夏目漱石がいたとは恐れ入る。編集方針は販促とは無縁で誇り高い。ただ、書店でも見かけず、丸善・ジュンク堂合併後の2012年から季刊になったのは、気になる。『書標』と合体させず品質を保つためにも、読者が年間購読(千円)で応援するしかないと思う。

有斐閣『書斎の窓』(月刊)
ゼミの先生が新入生に語りかけてくれる感じで、東大法学部に入学した気分になれる。法学部教授は意外に親切で率直だ。専門書と異なり短文でざっくり総括するため、ときに「おおっ」と驚くほど一刀両断で歯切れが良い。次世代への助言は人間味があって温かい。たとえば労働法の連載も大胆だったが、書籍化に対する辛口書評「著者に諫言する」は痛快で爆笑した。「リレー連載・国際法」も、外国語で共有しないと実用にならない国際法を、日本語で教育学習するジレンマをぶっちゃっける。鉄道刑法などは、99%鉄オタのマニアックな世界だが、こういう新領域も新発見だ。私は完全な門外漢だが、PR誌で紹介された法学書を書店でつい手に取った。実物の法学書はPR誌ほど読みやすくないのが、個人的に悔しいところだ。が、専門書PR誌として知る人ぞ知る成功例だと思う。

未来社『未来』
知的水準とセンスが高く、清々しい透明感がある。美しい文体が多く、各稿に論文のように脚注がついている。書籍化を前提にした短編の論考が多いようだ。本だったら身構えて手に取らないものも、数ページだから読んでしまう。「へー、このジャンルも意外に楽しい」と発見する。万人受けはしないだろうが、私は好き。書店でも入手できたが、年間購読料1200円を払った。


高級教養誌としての老舗PR誌

岩波書店『図書』(月刊)
著者が一流で、掲載文の質が高い。書店で入手しやすいが、年間購読料千円を払った。

講談社『本』(月刊)
高級教養誌。好みの問題だが、ときどき気になるタイトル・著者が並ぶ。三省堂書店で入手した。年間購読料は900円。

朝日新聞社『一冊の本』(月刊)
専門系・時事系・文学系のバランスが良い。幅広く受け入れられると思う。書店で見かけない。年間購読料は千円。

みすず書房『みすず』(月刊)
文芸誌不振・書籍離れの厳しい出版事情の中、有料誌とPR誌の中間を選んだのだと思う。表紙から中身まで高質で、連載記事は書籍化するようだ。1-2月合併号は「読書アンケート特集」。山関係の連載が複数あることにも食指が動くが、登山ブームのある中高年向きか。書店では見かけないが、年間購読領3,780円にも不満はない。が、同額で他社PR誌を複数購読できると考え二の足を踏むのは、私の意識が低いだけか。


書籍リストとして優れた出版社PR誌

歴史書懇話会『歴史書通信』(季刊)
各種学会賞・出版賞の「受賞図書」一覧が便利。HPでもPDFでダウンロードできる。書店で入手できた。

大学出版部協会『大学出版』(季刊)
全国の大学出版部が協力して、面白い特集を企画する。たとえばNo.93(2013年1月)では、2ページ見開きで各大学出版社の代表的な本を書評した。書籍と評者の選択が良質。とくに所属大学以外の専門家が書評しているのは信頼感があった。HPでもダウンロードできる。他にHPの受賞図書一覧は参考になる。書店で入手できた。

アジア本の会『全点リスト』(年刊)
国別の整理が便利。HPでも全点リストを検索できる。書店で入手できた。

極東書店『極東書店ニュース』(月刊)
出版社ではなく書店の発行。洋書を良く読む日本人には必須。刊行前の新書や高額古書を含め、主要な洋書を整理する。注目書籍には書名を邦訳し、簡単な説明を加える。英書中心だが独仏書も充実。


手に取ったことのある他の出版社PR誌


世界思想社『世界思想』(年刊)
毎年、時機に合った特集テーマを組んで一流の執筆陣から原稿を集めている。人文社会科学系の高級教養PR誌。この充実ぶりで無料(送料含)とは良心的で、いずれ何か買わないと申し訳ないような気持ちになる。

笠間書店『リポート笠間』(年刊)
日本語学・日本文学を古代から現代まで網羅。特集・対談はもちろん、時代別の学会時評まであり、PR誌というより学会誌に近い(『史学雑誌』の『回顧と展望』とか)。分厚いのに無料で驚く。書店で入手できた。

日本児童図書出版協会『こどもの本』(月刊)
文章説明を読むだけでは分からないので、実物を見たくなる。別冊は書店で入手できた。

創文社『季刊創文』(季刊)
薄い。やや間口が狭いか。書店で入手できた。

ジュンク堂書店『書標(ほんのしるべ)』(月刊)
ジュンク堂書店HPからダウンロードできる。特集がツボにハマれば面白いかも。たとえば2013年1月号では、「想像を超える奇妙な生命」特集で、「いるかもしれない生物」、「へんないきもの」、「ふしぎな植物」、「ちいさなものの世界へ」と、各項目でマニアックな書籍を分類紹介している。紹介される表紙写真が揃いも揃って気持ち悪いのが逆に爽快。私の行きつけのジュンク堂は、他の大型書店より書棚構成の自己主張が見劣りするが、このPR誌はその店頭よりも選書の趣味が良い。

ダイヤモンド社『経』(月刊)
『週刊ダイヤモンド』のスピンアウトのような経済系PR誌。ページ数が少なく薄い。『日本経済新聞』を毎日買うビジネスパーソンなら、日経の「やさしい経済教室」や特集・解説記事や書評をきちんと読む方が優先すると思う。新聞を読まない人には良いのかも。紀伊国屋書店で入手できた。

小学館『きらら』(月刊)
デザインも製本も凝っている。ライトノベル系の連載小説が多いようだが、携帯小説より上質なはずだ。書店で入手できた。

ポプラ社『astra』(月刊)
小説が充実している。ポプラ社刊行の小説が好きなら向くはず。読書歴を自分の好みで厳選する人には向かない。書店で入手できた。

白水社・みすず書房・東京大学出版会『レビュー合戦ー『パブリッシャーズ・レビュー』発刊記念』
編集者が他社の書評を行う異例な実験。レビュー合戦は1回限りとせず、今後もたまにやって欲しい。なお、『パブリッシャーズ・レビュー』そのものは、地味な書籍紹介の新聞風だが、無料だから贅沢は言わない。書店で入手できた。

春秋社『春秋』
「タダの本・100円の本」(Tojosの晴耕雨読)の紹介を見て、書店で探しているがまだ見たことはない。WEBで目次を見る限り思想系が強く、特集が専門の仏教に限定せず幅広いが、私の無知で執筆陣に馴染みがないので定期購読(800円)に至らない。

テーマ : 雑誌(既刊〜新創刊)
ジャンル : 本・雑誌

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プロフィール

terry75014

Author:terry75014
仏米英生活10余年、海外大学院卒。海外渡航・留学助言は各数10ヶ国。ここでは一個人の立場で独断と偏見を書きます。テリーと呼んで下さい。

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